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パソナグループ(2168)の
株主価値向上に向けて
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本ウェブサイトの運営会社は、ナナホシマネジメント(イギリス)(登記名称:Nanahoshi Management (UK) Ltd.、以下「弊社」といいます。)です。
本ウェブサイトは、株式会社パソナグループ(以下「パソナ」といいます。)の日本在住の株主を対象としたキャンペーンサイトです。
直近の活動状況
2025年8月1日、取締役会宛てに書簡を送付しました
内容:株主提案への反対意見およびバーチャルオンリー株主総会の運営
2025年2月7日、当時の代表取締役社長宛てに書簡を送付しました
内容:資本コストについての説明等
本ウェブサイトのコンテンツ
歪なバランスシートの最適化
株価がディスカウントで評価される要因の考察
不透明な関連当事者取引(寄付)の禁止
資本コスト以上の資本効率性を達成するための中期経営計画の見直し
株式会社の目的と上場要否の再検討の必要性
弊社が考えるパソナの課題等と解決策
(補足:本ウェブサイトにおいて、特に記載のない限り、株価及び時価総額は2025年7月22日終値の2,113円及び849億円、財務データは2025年5月末現在。)
貯め込まれた現金と歪なバランスシートの構成
資料1のとおり、パソナの時価総額849億円(■)に対し、同社が保有する現金同等物から有利子負債と預り金を控除したネットキャッシュは687億円(■)となっています。また、同社の自己資本は1,349億円(■)まで積み上がっており、自己資本比率は58.7%(受託案件の預り金を除いたベース。)にも上ります。
資本コストの考え方は「会社が持つ資産は、その資本提供者である株主や銀行などの期待を上回るリターンを生み出すことで価値を創出する」というものです。しかし、このように多額の現金が貯め込まれた異常な状況を踏まえると、パソナが資本提供者の期待に応えているとは到底言えません。
その結果として、資料2のとおり、パソナの事業価値は397億円(■)と推計され、同社の事業は企業価値1,555億円(■)に対して著しく低い評価を受けているといえます。このような評価のひとつの要因は、同社が現金をビジネスに活用せずに非営業用資産として貯め込んでいることです。
資料1:歪なバランスシート
時価総額およびネットキャッシュと比較して自己資本は膨大な金額となっている。
資料2:事業価値の推計
パソナの事業価値は約400億円と算定される。
(補足:事業価値は企業価値(時価総額、有利子負債および預り金の合計)から、非営業用資産を控除して推計しています。また、非営業用資産は現金から営業用現金を控除した余剰現金の金額としています。なお、営業用現金は、パソナの上場来の現金÷売上高の第1四分位である7.1%を、パソナの2026年5月期通期会社計画売上高に乗じて算定しています。)
株価に対する異常に低い評価
資料3のとおり、パソナの株価純資産倍率(以下「PBR」といいます。)は0.6倍となっており、著しく低い水準です。この要因は、上述のとおり、同社のバランスシートが歪な構成となっていることが挙げられます。
また、資料4のとおり、パソナは子会社のベネフィット・ワンの売却によって得た潤沢な資金を有効活用していないことから、株価が軟調に推移しているのだと考えられます。
パソナは例年剰余金処分に関する株主総会決議を行わず、取締役会決議にて配当金額を決定していますが、パソナの資金使途が適切でない以上、株主総会において剰余金処分議案を諮っていただくことが期待されます。
資料3:PBRのイメージ図
株価÷一株当たり純資産は著しく低い水準となっている。
資料4:株価の推移
株価は底値圏で推移している。
(補足:第一生命ホールディングスによるベネフィット・ワンに対する公開買付けへの合意が発表された、2024年2月8日以降の株価。)
株価がディスカウントで評価される要因の考察
資料5に示されているように、ROE(自己資本利益率)と株主資本コストの関係から株価を評価する方法のひとつに「エクイティスプレッド」という考え方があります。エクイティスプレッドにはさまざまな形がありますが、「ある水準の資本効率性(以下「実績ROE」といいます。)で得られた利益が、同じ水準のリターンの事業に再投資される」という前提に基づいています。そのため、もし得られた利益が、実績ROEを上回る高いリターンが見込める事業に再投資されるのであれば、PBRは1倍を超えることになります。
例えば、資料5(右図)のとおり、ある会社の株主資本コストが8%と仮定すると、8%以上のリターンが見込まれる資金使途を選択していれば、PBRは1倍以上になるはずです。しかし、資料6のように、低いリターンの資金使途を選択すると、将来のROEの低下が意識され、PBRは1倍よりも低く評価されます。繰り返しになりますが、パソナの株価は株式市場ではPBRが0.6倍と、1倍を大きく下回る水準で評価されています。
資料5:エクイティスプレッドの考え方
ROEと株主資本コストが同水準であればPBRは1倍で評価される。
エクイティスプレッド式
PBRが1倍以上となるイメージ
(株主資本コスト8%の前提)] -->| | B(株主資本コスト
以上の投資) A -->| | C(株主還元) B --> D[期待リターン
例:10%] C --> E[株主資本コスト
8%]
資料6:PBR1倍割れの評価のイメージ
現時点のROEが高くても、低いリターンが見込まれ、将来のROEが低下するとみなされればPBRは1倍を下回る。
PBR1倍にならない要因のイメージ
(株主資本コスト8%の前提)] -->| | B(株主資本コスト未満の資金使途) B --> D[期待リターン
例:2%] D --> E[将来のROE↓
(<株主資本コスト)]
株主資本コスト未満の資金使途の例
- リターンの見込めない事業への資金投下
- 事業の発展に寄与しない寄付行為
- 投資にも株主還元にも活用せず、内部留保として現金を貯め込むこと
関連当事者への多額の寄付と情報開示に関する重大な懸念
資料7のとおり、パソナの創業者である南部靖之氏は、企業活動において利益の追求にとどまらず、社会への還元を重視すべきとの理念を掲げています。弊社としても南部氏の理念には一定の理解を示すところです。
しかしながら、上述のとおり、現時点におけるパソナの株主価値は著しく毀損されています。株式会社においては、主権者たる株主の利益を適切に確保することが不可欠であり、社会的貢献を追求する場合であっても、取締役にはそれと並行して株主価値の毀損を速やかに是正する責務があると考えます。
それにもかかわらず、資料8のとおり、同社は6.8億円という多額の寄付を関連当事者に対して行っています。さらに、資料9のとおり、当該寄付は招集通知の補足資料(第17期定時株主総会その他の電子提供措置事項)において「関連当事者取引」として開示されておらず、透明性のある情報開示の観点から看過できないものと考えます。
なお、「関連当事者取引」とは、会社と特別な関係にある相手との取引のことを指します。資料10で指摘されているように、こうした取引では、会社にとって不要な取引を強いられたり、取引条件が不当に歪められたりするおそれがあります。
資料7:南部靖之氏の著書より引用
利益の確保と社会還元の両立は、まさに株式会社の取締役が果たすべき責務だといえる。
「利益」と「社会還元」の両輪で企業という車は前進する。
株式公開とは「公共の役に立つ」という意味(略)たんに利益を追求したり会社の規模を拡大することを目的としたビジネスは、たとえ一時のベストセラーになりえても、ロングセラーにはなりません。世の中に対して明確な役割を果たすことのできる企業だけが社会的な存在意義をもち、ロングセラーとして長く社会から必要とされる企業になりうる(略)
出所:「この指とまれ」16頁および63頁(南部靖之、2001年)
資料8:関連当事者取引(寄付)の開示内容
「一般財団法人パソナ専門職大学院設立準備財団への寄付金拠出額については、当社子会社の取締役会の決議に基づき決定しております。」とも説明。
種類 | 役員及びその近親者が代表理事を務める財団法人 |
会社等の名称 | 一般財団法人パソナ専門職大学院設立準備財団 |
所在地 | 兵庫県淡路市 |
事業の内容 | 当該財団の活動目的は、地域ごとに異なる自然環境や歴史、文化、食といった固有の資源を活用し、魅力的な地域づくりに貢献できる人材の育成を目的とした大学院大学を設立することであります。 |
取引の内容 | 寄付 |
取引金額 | 680百万円 |
(出所:第17期有価証券報告書120頁。)
資料9:関連当事者取引(寄付)に関する開示の時系列の整理
株主総会前には寄付の当該情報は開示されていなかった。
寄付に関する記載なし。
寄付に関する記載あり。
資料10:関連当事者取引に関する懸念の解説
株式会社東京証券取引所は、規律を欠いた関連当事者取引を容認していない。
経営者が関与する取引(経営者自らが営業して獲得した案件・企画した案件や、例外的に経営者が決裁を行っている案件等)については、一般的に社内からの牽制が効きにくく、不正につながる懸念もあります。したがって、そうした取引に対しても組織的に検討が行われ牽制機能が発揮されるような適切な体制が整備されているかどうか、また実際に行われた取引が不適切なものでないかどうかについて確認します。
(出所:新規上場ガイドブック2024(プライム市場編)56頁、太字下線は弊社。)
中期経営計画の見直しの必要性
資料11に記載のとおり、2025年7月17日、パソナは2026年5月期を初年度とする5か年の中期経営計画🔗の全容を公表しました。しかしながら、同年4月14日付のコーポレート・ガバナンスに関する報告書🔗において言及されていた事業ポートフォリオ再構築に関する具体的な方針や位置付けは明らかにされておらず、また、売上目標は一部のセグメントのみ開示され、利益目標についても開示されているセグメント間で指標が統一されていないなど、計画全体として具体性を欠く内容となっています。
このように、同計画は現状の事業セグメントを所与として策定されており、事業ポートフォリオ再構築については考慮されていないものと考えられます。また、パソナが掲げているROE8%の達成に向けた利益水準や自己資本の水準については、同日開催された決算説明会では「積み上げ」であると説明されました。しかし、資料12に示すとおり、中期経営計画は、現状の延長ではなく、株主価値の向上という将来のゴールから逆算して今を設計するアプローチに基づくべきです。そして、資料13に示されるように、中期経営計画は、株主との約束にほかならず、経営陣は株主価値向上の実現に責任を持って取り組む姿勢が求められます。
なお、全社コストの低減や利益率5%目標という内容は、2017年から2018年にかけてオアシスマネジメントによって提案されていた内容🔗と酷似しており、実に8年を経てようやく取り入れられたものに過ぎません。この点に照らせば、事業ポートフォリオ再構築は、現在の株主価値向上にとって不可欠な視点であり、これ以上先送りにする余地はありません。
したがって、現行の中期経営計画については、事業ポートフォリオ再構築の観点から各セグメントの位置付けを見直し、より具体的かつ定量的な説明を加えたうえで、株主価値の向上に資する新たな中期経営計画を策定していただきたいと存じます。
資料11:パソナの中期経営計画の概要
ROE8%という目標は、パソナ自身が公表した株主資本コスト8%を基準としたものと考えられる。
実績値 | 目標値 | 弊社算定値 | ||
---|---|---|---|---|
25年5月期 | 30年5月期 | 変化率 | 1年平均 | |
売上高目標 | 3,092億円 | 4,000億円 | 1.3倍 | +5.3% |
BPOソリューション(注1) | 1,372億円 | 1,700億円 | 1.2倍 | +4.4% |
地方創生・観光ソリューション | 71億円 | 200億円 | 2.8倍 | +23.1% |
その他 | 1,649億円 | 2,100億円 | 1.3倍 | +5.0% |
利益目標 (全社コスト売上比率) |
経常赤字 (4.7%) |
経常利益率5% (3.5%以下) |
- | - |
BPOソリューション | 売上総利益率 21.3% |
同24% | 売上総利益 1.4倍(注2) |
- |
地方創生・観光ソリューション | 営業利益 ▲19億円 |
同20億円 | 黒字転換 | - |
その他 | - | (注3) | - | - |
ROE | -(注4) | 8% | 大幅改善 | - |
当期純利益 | ▲87億円 | 非開示 | - | - |
自己資本 | 1,349億円 | 非開示 | - | - |
注1:「BPOソリューション」は、ビジネスプロセスアウトソーシング(Business Process Outsourcing)の略称であり、パソナの中期経営計画資料における表記に従っています。
注2:2030年5月期の売上総利益1.4倍は、408億円 ÷ 292億円にて算定しています。分子は、2030年5月期売上高目標1,700億円 × 同売上総利益率目標24% = 408億円、分母は、2025年5月期売上高1,372億円 × 同売上総利益率21.3% = 292億円 と算定しています。
注3:2030年5月期の経常利益は、売上高目標4,000億円に対し経常利益率5%を乗じることで200億円と試算されます。これに対し、2025年5月期の経常損失5億円に、BPOソリューションの売上総利益増加分116億円(注2の408億円から292億円を控除した金額)、地方創生・観光ソリューションの営業増益分39億円を加えると150億円となり、200億円から150億円を控除した残りの50億円はその他事業の増益と、BPOソリューションの販売管理費削減によるものと解されます。
注4:2025年5月期は赤字であったため、ROEの分子がゼロとなり、計算ができないことから非表示としています。
資料12:「積み上げ型」と「バックキャスト型」の中期経営計画の評価
バックキャスト型(将来のあるべき姿から逆算して構築する戦略)が望ましいとされる。
投資家に将来の成長性を訴求していくためには、将来のビジョンを含む長期戦略からのバックキャスト型で中期経営計画を策定することが望まれるが、企業の中には、事業部門からの積み上げ型で中期経営計画を策定している事例もある。
出所:経済産業省「持続的な企業価値向上に関する懇談会(座長としての中間報告)」(2024 年6月26日)12頁。
資料13:中期経営計画の位置付け
中期経営計画は単なる計画ではなく、株主に対するコミットメントのひとつだとみなされている。
【原則4-1.取締役会の役割・責務(1)補充原則4-1②】
出所:株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」(2021年6月11日)
取締役会・経営陣幹部は、中期経営計画も株主に対するコミットメントの一つであるとの認識に立ち、その実現に向けて最善の努力を行うべきである。仮に、中期経営計画が目標未達に終わった場合には、その原因や自社が行った対応の内容を十分に分析し、株主に説明を行うとともに、その分析を次期以降の計画に反映させるべきである。
株式会社の目的と上場要否の再検討の必要性
株式会社の取締役の責務は、自身を選任する権利を持つ株主に対して、株価の値上がり益と配当で報いることです。パソナの取締役におかれては、株主価値の向上という視点で、経営に臨んでいただくことに期待します。
また、それが困難な場合、非上場化することも選択肢のひとつです。株主の利益を確保した上での非上場化は取締役にとって恥ずかしいことではありません。
なお、株主価値向上のための経営方針の推進や非上場化の検討が難しい場合は、株主価値向上を推進できる取締役を招聘し、現取締役にはすみやかに辞任していただきたいと存じます。
資料14:第一生命ホールディングスによるベネフィット・ワンに対する公開買付けへの合意が発表された、2024年2月8日以降のパソナの株主総利回り(トータルシェアホルダーリターン)
株価は絶対値でマイナス圏で推移しており、対指数では大幅にアンダーパフォームしている。
(補足:株主総利回りとは、配当落ちの影響を控除した株価の指標です。なお、配当込みTOPIXは税引後のベースであり、パソナの配当も同様に税引後に再計算して比較しています。)
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